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その他の地域2020/07/28ツイート
【街の灯トーク#4】ポストコロナに向けて、オンライン市民講座の可能性⑤
広がるオンラインの可能性
寺西 では、皆さんからの質問に移りたいと思います。
ネットでやると知識や情報が無料になりがちだけれど、どうやってお金をちゃんと取る仕組みを作れるか。知識とか情報とか思想とか運動とか、そういうものの価格はどうやってつけるべきか、という質問がきています。
内田 難しいですよね。私たちも、今はずっと無料でやっていますが、全部が全部無料でできるとも思っていなくて。5月に始める予定だった自由学校は、開始時期をぐっとずらして8月から始めることにしたものには有料のものもあります。これからは、無料のものも、有料のものもやります。
なぜこっちは無料であっちは有料なんだという価格、これに正解はないようなものでして、講師料は発生しても、場所代はいらないんですね、オンラインだし。ただやっぱり、NPO、NGOはいただいた受講料で運営していかないといけない。いわゆるアドミニコストがないと活動は持続的にならないので、全部無料では提供できないというのがあります。
寺西 毎回、寄付の呼びかけをしていらっしゃいますが、寄付が増えている実感はありますか。無料が増えているぶん、応援したい人も増えているかなと。
内田 寄付のピークは、人数がピークだった5月中旬だと思いますけれども、今も毎回少しずついただける感じになっていますね。ありがたいことに。
寺西 オンラインの弱みというか「参加者同士の交流はどれくらいできていますか」という質問がきています。足りていない、顔が見えないからやりにくいところをどう克服されていますか。
内田 終わったあと、いわゆるズーム飲み会みたいなものは2回か3回くらいしたことがあります。飲み会でなくても、残って講師への質問を受けることはしていましたね。そこでは活発な意見交換をしますが、やっぱり顔とを顔を突き合わせて同じ場所にいるのとは違うといえば違うわけなので、オンラインだけで足るとは私たちも全然思っていなくて、コロナが落ち着いてからという条件はつきますが、やっぱり教室という同じ空間で学ぶことと併用していく必要はあると思いますね。
寺西 遠隔地に住んでいる人にとってはハンディが低くなるのだけれども、直接コミュニケーションして深めていく、そういう隙間も重要ですね。講師と参加者とのつながりも、おそらく持ちにくいのでは?質問はできても、そのあとつながることはできていますか。
内田 できますね。たまに見られるシーンとしては、講師の人の昔のお友達が参加していて、「おおお!」「まだ生きていたのか!」みたいな会話があったりして。ちょっと間が開いた人とも出会えるとか、Facebookとかではよくありますが、そういうことがオンラインで活性化している面もあります。
寺西 「リアルなときよりも、質問の数は増えていますか」という質問もありますが。
内田 大学の先生から聞いたのですが、リアルの講義だと学生さんも遠慮なのか質問しにくいのに、ズームのオンライン講義だと、みんなフラットに、チャットに書き込めるという意味では、普段なかなか質問しない人もするというのはありますね。そう感じます。
寺西 オンラインにもいろいろ使える要素がある、新しい発見があった感じですね。
内田 そうですね、可能性はもっとあるかもしれませんね。
寺西 せっかくなら、内田さんが普段お付き合いのある海外の仲間とつながれてもおもしろいと思うんですが、言葉の壁は大きいですかね。
内田 言語の壁はやはりあって、国境を超えて違う言語の方と同じようなウェビナーというのはやりにくいんですけれども、ただこれも同時通訳の機能が今後どんどん出てくるでしょうし、人間が通訳してもいいんですが、言語ごとにチャンネルが変えられるとか、すでにあるいろいろな機能を私たちも学んで使っていければと思います。
寺西 今後のこともお聞きしたいのですが、今回これをひとつのチャンスと捉えて新しくやってみたいことや思いはありますか。
内田 8月にスタートする自由学校に関しては、オンライン受講制度を作りました。PARCの授業としてはかなり安くしていて10回で15,000円、それでも高いんですが。教室でもやりながらオンラインでもやるという、今までしたことのないチャレンジです。教室でリアルな議論をするところにオンラインでも入ってきてもらうので、おもしろい反応があるといいなと思っています。
寺西 言論空間が広がっている実感が持てるようになるといいですね。
内田 また、PARCにはオーディオ・ビジュアル部門があって、DVD教材を作っています。コロナになって、大学の先生もすべてオンライン授業となり苦労されているなかで、教材がすごく求められていることがわかり、これまた大盤振る舞いだったんですけれども、PARCがこれまで出したDVDを期間限定で無料公開しました。これまた大好評で、もっと長くこの作品を無料公開してくれ、この作品じゃなくてこっちを無料公開してくれとか、強い要望や、中には無理難題もきたのですが。今はDVDの形で売っているので、今後はネットフリックスみたいにボタンを押したらすぐ映像をネットで見られるような、そういう販路の可能性もあるかと。大学もオンラインが主流になるのかわかりませんが、いずれにせよ活用されるのは間違いないので、そうするといろいろと、たとえば海外の現地とリアルにつながる授業とか、いろいろできるのかなとは考えています。
寺西 次は、自由学校で扱われた「コロナショックで監視社会が進むか」という講座に関連してのご質問だと思いますが、マイナンバーについて。「韓国や台湾から学ぶことはすごく多いと思うのですが、日本も遅ればせながら推進していく方向だけど、個人情報を提供するには信頼関係が不可欠で、日本にはそぐわないんじゃないか、反対すべきでしょうか」と。
内田 日本のマイナンバーカードの普及率は20%もいっていないですよね。国家公務員のマイナンバーカードの所持率も政府の調査によると、これまた非常に少なくて3割にいっていない。公務員でさえ持っていない。これはおっしゃる通り、信頼関係が必要だと思いますし、給付金の支給になぜこんなに時間がかかるのかとか、不便なこともある。
つい先週の講座で話題になった、接触確認アプリCOCOA。これは簡単にいうと、毒にも薬にもならないんですよ。接触確認アプリとはいえ、個人情報には結びついていないので、このアプリをいれたからといって個人情報が吸い取られることはない。逆に誰が接触した人、誰が感染している人かもわからない。すごく変な仕組みで、あなたはあなたの生活の中で感染している誰かに接触しましたという情報しかこないんですよ。怖いですよね。
寺西 不安がかきたてられるくらいかな。
内田 不安をかきたてる。かつ、その確認がなされて症状が出た人は、もちろん保健所や発熱外来にいくわけですけれども、保健所の数も十分ではなく、電話もつながらない。いくらアプリが教えてくれても、リアルな世界の医療体制が不十分で、適切な検査さえされない、治療もされないかもしれないという非常にチグハグなことになっています。かつ一昨日ですかね、このアプリがすでに不具合を起こしている。日本はIT化をすすめるとか、マイナンバーを進めてポイントを使ってどうこうとか、スーパーシティという政府のプランで科学技術を使った夢のような世界を実現しますというんですけれども、実態がまったく伴っていない極めて奇妙な国なんです。アメリカや中国のように、国をあげてそういう技術に投資して、大きな企業も死ぬほど育成して世界に出ていかせるというのであれば、まだわかるのですが、いいか悪いかは別として、中途半端な支援と投資しかしていなくて、言うことだけ威勢がいい。でも実態は何も人々を助けていない。感染アプリも、給付金もそうです。
寺西 試行錯誤が続きそうですね。むしろそこを、市民社会でカバーできる、自分たちで違う方法を考える、下からあげていく仕組みができたらいいなと思うし、PARCの講座も役に立っていくと思います。このまま何となく忘れられていく、でもその後ろで起きていることがたくさんあると思いますね。NGOも一緒に発信していきたいですね。
内田 はい、我々のオープンオンライン講座で現地の報告とか、一緒にどんどんしていきたいと思っています。それぞれの現場をすべてとなると大変ですが、海外の現場でこのコロナどう捉えているかとか、現地の変化とかぜひ伺いたいです。
寺西 今日は十分やり取りができなかったので、これからみんなで何をしたらいいかというオープンな場を持ちたいですよね。今はウェビナーで講師のお話を聞く形が多いと思いますが、誰もが発言できるようなオープンな場はまだですよね。
内田 それはまだしていないですね。
寺西 次は、「過去のオープン講座の記録は残っていますか?」というご質問。
内田 あります。PARC自由学校のページに、過去の講座をYouTubeで掲載しています。あと私たちがこだわっているのは、講師の方の資料も全部もらって公開すること。だいたいみなさん「資料をください」って言ってくるので、先にアップしています。
寺西 知識の価格は無料なのかという話もありましたが、本当にありがたいですね。
他に、応援メッセージもいただいています。「壁を越える試みができると思います」「難しいと思いますが、対面とオンラインとハイブリッドでやってください」とか。
内田 みなさんからの温かいメッセージを拝見して涙が出ます。
寺西 今後、いろいろ持ち込み企画をしてもいいですかね。今日ご参加くださった方も、PARCに「これをしてほしい」とか、NGOの方なら、「ぜひ一緒にやりたい」というのがあれば、どんどんご提案ください。
内田 ぜひ、一緒にやりましょう。
寺西 今日はご参加、ありがとうございました。