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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2019/06/27

【6月のメッセージ】ニューヨーク公共図書館から


公共性? ー ニューヨーク公共図書館から

 東京・神保町の岩波ホールで上映されているドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブス』がロングランを続けています。

 題名にある巨大図書館の事業が3時間半にわたって紹介される映画。実に92館を擁するこの図書館に驚かされるのはその活動範囲の広さです。図書や資料の貸し出しは無論、市民からの問い合わせへの応対、子どもへの読み聞かせなどは日本の図書館からイメージできるものでしょう。それらに加え移民への英語講座、ホームレス問題の議論、ネット環境のない人への機器の貸し出し、そして高齢者住民へのダンス講座さえ行っています。

 その広範な活動に感銘を受けて映画化を進めたワイズマン監督自身、撮影の過程で多くの気づきがありました。「彼らは今ある知識を、誰もが利用できるようにしている。本を貸すだけでなく,コミュニティーの主要機関となっていて、今何が起きているか人びとに理解してもらい、知的な選択ができるようにしている」それは結果的に、「トランプ大統領が反対するすべての価値観を体現している。オープンさ、民主主義、理解、学び、教育、あらゆる人種や民族、ジェンダーへの寛容」

 この図書館は「公共図書館」と名乗っています。運営はニューヨーク市の出資が半分、もう半分は市民を含む民間の寄付によるもので、市内に住むか勤務する人なら誰でも会員になって原則無料で利用できます。司書は、誰しも平等に接するように訓練をされています。日本では「公共」は「私」と区別され、自治体が保障するものと考えがちです。事実、民間に委託された図書館の蔵書がたちまち偏って公共性を失ってしまったという例も聞きます。しかしこの図書館は、市民自らが出資することが、より公共に近づくとの理念に基づいています。自分たちの手で平等を確保しようという強い自負が見て取れます。その姿勢にはNGOに携わる私たちも、学ぶべき点が少なくないように思います。より気持ちのいい、住み心地のいい社会をつくる上で、自分は「公共」をどう捉えどう関わろうとしているか、確認する価値は少なくないでしょう。(アーユス)