スタッフ雑記帳
スタッフ雑記帳2018/09/14ツイート
NGO向けの勉強会を開催しました
2018年9月6日に、アーユス事務所近くの長専院で、「ブレークスルーを起こし、組織強化を実現するためには」と題したNGO向けの勉強会を開催し、アーユス関係者も含めて22名が参加しました。今回の勉強会は、前半はNGOブレークスルー支援事業の中間報告及びパネルディスカッション、後半はNGOの組織強化に関するディスカッションという二部構成で実施しました。
まず、前半はアーユスが現在NGOブレークスルー支援事業で支援を行っている2団体からの発表を通じて、それぞれのNGOの取り組みについて学び、、NGOが組織運営や事業実施の面で抱えている課題や行き詰まりをどのように打破(ブレークスルー)することが出来るのかを考えました。さらに、パネルディスカッションでそれぞれの事業を行う上での課題をどのように克服したのかという点や、事業で生まれた新たな展開などについて説明がなされ、参加者は改めて自団体の活動を見直し、組織的にも事業的にもブレークスルーの必要性を感じる機会となりました。
はじめに、「シャプラニール=市民による海外協力の会」の宮原麻季さんからは、長年にわたってバングラデシュやネパールの女性たちが作る手工芸品に特化してフェアトレードを行ってきたが、売上が横ばいから減少へと転じている状況に危機感を感じていた中で、世界のフェアトレードの趨勢や日本のフェアトレード市場の現状を考えた上で食品商材の開発及び販売に活路を見出し、ネパールコーヒーの製品化と販売に取り組み始めたいきさつを紹介。ネパールコーヒーの売上は順調に伸びており、2018年度はネパールの現地パートナーへの経験共有や商品の品質向上に向けた動きが進んでいること。社会人ボランティアチームの活動が活発になって自主的なイベントが行われるなど、事前に想定していなかった成果が生まれていることなどが報告されました。こうした取り組みを通じて、最終的にはシャプラニールの経営基盤を安定させることと、南アジアのフェアトレード業界において食品輸出の拡大をめざし、南アジアの貧困問題の解決に繋げていこうとする長期の目標についてお話いただきました。
一方、「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」の崔洙連さんからは、移住者や外国にルーツを持つ人々の権利と尊厳が保障される社会実現のための制度・政策の策定をめざして、多くの人々が参加し、意見を出し合う場をつくり、彼らも社会の一員として「ここにいる」ことを伝えるキャンペーンについて報告いただきました。移住連は、活動の柱の一つとして省庁交渉や国会ロビイングなどの政策提言に力を入れてきましたが、長年活動の中心における当事者の不在という課題に直面していました。そして、移住者が直接声をあげられる社会をつくるために、当事者が活動の中心となって政策提言を行う新たなキャンペーン「ここにいる koko ni iru」を立ち上げ、インターネットやSNSを活用して写真や動画で自らのメッセージを発信する取り組みなどが始まり、注目を集めています。2019年に全国フォーラムが開催されて、当事者の多様な声が日本社会に広く発信される予定です。
続くパネルディスカッションでは、今後コーヒー作りにおいてビジネスとしての経営感覚や中間での経費節減などに取り組むことの必要性や、専門家による政策提言と当事者による政策提言の違いや大きな社会問題となっている技能実習生制度の問題への対処について語られ、新たな取り組みを始めたことによって思いがけない効果があったことを肯定的に受け止めて伸ばしていくことの大切さや、日本社会のマジョリティーに届いていないジレンマをどう克服すべきか、熱心な議論が展開されました。
後半のディスカッションでは、参加者を4つのグループに分けて、事前のアンケートで最も多くのNGOが組織強化の課題として挙げた「資金調達」について意見交換を行い、それぞれの団体の課題や悩みなどを共有し、課題解決に向けた方策やアイデアを出し合うような機会となりました。それぞれのグループで話合うテーマを選んでもらい、それらのテーマをさらに深掘りして議論してもらうという二段階でディスカッションが行われ、ファンドレージングを担う人材をどう育てるのか、新たな寄付者/サポーターを増やすための方策、人もお金もない中でブレークスルーを実現させる方法、資金調達のグッドプラクティスを共有して活かすための方法など、それぞれに異なった視点から資金調達についての話し合いが行われ、どのグループも最後まで白熱した議論が繰り広げられました。
今後もアーユスではこうした勉強会の機会を設けて、グッドプラクティスを持っている団体の話をじっくりと聞いたり、例えば資金調達であればより具体的な手法の比較検討や実践例について学ぶ機会などを作っていきたいと考えています。