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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2020/11/27

【11月】共感のメッセージは国境を越える


 韓国のポップグループ、BTSの勢いが止まりません。アメリカのビルボード・ミュージック・アワードを4年連続で受賞。今年発売したアルバムは米国内上半期で最高の売上を記録。来年2月に発表されるグラミー賞の最優秀ポップ・パフォーマンス部門に初ノミネートされています。
 それは、韓国政府による意欲的なコンテンツ産業の育成の成果に違いありませんが、他のKポップアーティストを圧しての成功には、BTS独自の戦略があったことは見逃せません。まず第一に、ARMYと呼ばれるファンの位置づけをBTSとの共同体的に設定し、ARMYの現実(の不安や悩み、希望)を作品に生かしてきたことがあげられます。そして、Kポップの世界では政治的な発言は控えるのが通例になっていますが、BTSは社会問題にも臆せず発言し、作品に反映させ、チャリティーに積極的なのも特徴です。
 社会的発言では、2018年に国連総会で世界中の若者に対し、声を上げ続けることの重要性を訴えたことが印象的ですが、今年特筆すべきは、BTSがブラック・ライブズ・マター(BLM)運動に賛同を表明した時でした。それに応えたアメリカ国内のARMYが、世界中のARMYたちにBLM運動の意義や目的を伝える役割を果たしました。それによりたちまち多額の寄付が集まったのですが、この動きの主導はBTSではなくARMYだったとも見られています。
 BTSの歌詞世界には「若者を傷つける社会に対して声を上げ、NOを突きつけ、自分を愛することの大切さを伝え続ける」との柱があるといわれます。そのメッセージが欧米の若者たちにも共感を拡げている事実とともにその背景を思う時、他者他国との相互理解はそれほど遠い目標ではないのかもしれないとも思わされます。特に今、新型コロナ渦や経済格差など、課題が世界共通化している状況においては。
 BTSは「欧米人のアジア人観」に変更を促している感があります。それは「日本人のKポップ」観も更新させるかもしれません。華やかなダンスパフォーマンスや端正な容姿だけで見過ごしていたらちょっともったいないですよ。