平和人権/中東
平和人権/中東2015/02/20ツイート
ヘブロン訪問:宗教と政治の絡み
ヘブロンを訪問しました。
パレスチナ滞在の2日目には、ヘブロンという西岸地区でも南の方に位置する町に行きました。この町にあるイブラヒームモスクには、旧約聖書で有名なイブラヒーム、サラ、イサク、リベカ、ヤコブ、レアのお墓があるところ。しかし、建物は中で2つに分けられていて、半分はムスリムの方のみ、もう片方はユダヤ教徒の方のみが参拝できるようになっています。
パレスチナ自治区は政治的に大きく3つの区域に分かれます。その中で、パレスチナ自治政府が行政権も警察権の両方を持っているところがA地区と呼ばれるところ。ヘブロンもそのA地区の1つなのですが、市内はなぜかさらに2つの地区にわけられていて、このイブラヒームモスクの周りはイスラエル当局が管理をし、パレスチナ人の人々はほぼ住んでいないところになっています。
石畳の坂を下りていくと、それこそ中世の町並みにような美しい石造りの家が建ち並ぶヘブロンの中心地。しかし、今はそれこそゴーストタウンと呼ぶのがふさわしいほど、店のシャッターは下ろされ人気(ひとけ)がありません。ユダヤ教徒の方が参拝される側から建物に入ろうとすると、検問所があり、「ムスリム」ではないと認めてくれた人だけを通してくれる有様。
長い歴史の中で異なる宗教が同じ場所を聖地にしたのは、今は異なる宗教でも始まりが同じだからです。通常、A地区と呼ばれるパレスチナの町の中にユダヤ人の方が住んでいたことはなかったようですが、ヘブロンに限ってはこの聖地があるが故に、以前からムスリムの方もユダヤ人も住んでいたとのこと。
ムスリムもユダヤ教徒も共に祈ることがあったと聞くイブラヒームモスク。閑散とした道をしばらく進むと検問所があり、そこを越えると大いに賑わっているヘブロンの町に出ます
と、ここまで書くと、異なる宗教を信じる異なる民族が、聖地をめぐって長年争ってきたというような印象を与えそうなのですが、必ずしもそういうわけではなく、この聖地奪還を求めて過激な行動をしているユダヤ人も、イスラエルの中の一部の人と聞きます。いわゆる、「極右」と呼ばれる人たちが、自分たちにとって聖なる場所に異教が入ることは許すまじき行いであり、聖地を取り返すのは神の意志であるために、暴力的にも聖地を取り戻そうとしていると聞きます。超正統派の人たちは、聖なる土地は神が与えてくれるものであって力尽くで奪うものではないといい、左派の人たちは聖地の管理も現在のままでいいという。宗教と政治の関係は、否が応でも深いものがあるのだと、整理しきれない頭で考えてしまっています。(M)