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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/中東

平和人権/中東2013/03/05

ガザで子どもの栄養失調を防ぐ(JVC)


パレスチナ報告

ガザで子どもの栄養失調を防ぐ

知られざる「封鎖」

 パレスチナ・ガザ地区と聞くと、よくニュースにも出てくる大変なところというイメージがあるかもしれません。頻発する空爆などの報道性の高い問題もありますが、さまざまな問題を裏づけているのは、ガザが封鎖されているという事実です。

 2006年にイスラエルと敵対関係にある政党のハマースがガザ地区で台頭するようになってから、ガザ地区はイスラエルによって陸海空の出入りを禁止され、巨大な監獄のような状態になっています。通常の輸出入はほぼ完璧に不可能とされ、限られた人道物資だけがガザに搬入され、他はエジプト国境から密輸トンネルを通ってマーケットに入ってきます。人間が本来持っているべき移動の自由や経済活動を営む自由を否定され、人間の尊厳を奪われている状況、これが「封鎖」であり、それによってガザは慢性的な人道危機にあります。

子どもの健康を守る母親たち

 人道危機の慢性化は、子どものような社会的弱者に貧血や栄養失調という形で襲いかかります。JVCは長い間ガザと関わってきましたが、封鎖が始まってからというもの、ガザの人たちが自分たちの手で子どもを栄養失調から守れるような方法を模索してきました。そこで出会ったのが、人口の密集するガザ市で栄養教育を実践しているお母さんたちでした。

 JVCはボランティアで働くそのお母さんたちを応援する事業を開始し、彼女たちが子どもの栄養失調や貧血を予防するために行う成長状態の検査や、幼稚園や地域社会施設での栄養教室、妊婦や乳幼児の母親たちへのカウンセリングなどを側面的に支援しています。中でも、手に入りやすい安価な食材で栄養価の高い料理を教える調理実習では、毎回お母さんたちが張り切って活動しています。

「ご飯と野菜を炊き込む際は、ビタミンが逃げないように、野菜をゆでた水を使うように」 「食事から採れる鉄分を逃さないために、鉄分の吸収を妨げるタンニンが入っている紅茶を食後2時間は飲ませないように」

 トレーニングを受けたボランティアのお母さんたちからこういったアドバイスをもらいながら、地域のほかのお母さんたちが自分たちで子どもの健康を守る主体性と自信をつけていきます。こうしたボランティア活動が、少しずつ地域社会に根付き、そしてガザの将来を担う子どもたちを守っていくための仕組みとなっていくことを、JVCは目指しています。

攻撃、そして日常としてのボランティア活動

 2012年11月、ガザにまた空爆が広がりました。イスラエルは地上侵攻も辞さない構えで、ガザの諸勢力もロケット弾などの武力で応戦しました。封鎖により逃げ場のないガザの一般の人たちは、息を潜め、お母さんたちも活動を一時休止しました。活動地はかなりの打撃を受け、全壊した家屋は153軒、そして悲しいことに死者も16人に上りました(ガザ地区全体では158人)。

 11月21日に停戦合意がなされ、激しい交戦は止みました。果たしてこのような状態で活動を継続していくことは現実的といえるのか、私たちとしてもかなり不安になりました。しかし驚いたことに、お母さんたちは停戦後何日もたたないうちに活動を再開しました。あるお母さんボランティアは言いました。

「日常に戻ることが何よりも求められています。なぜなら空爆という非日常と、それによってもたらされた精神的苦痛から抜け出すことは、日常を取り戻すことによってのみ可能だからです」

 子どもの健康を守る活動が日常となった彼女たちの力強い言葉は、支援をする側とされる側という垣根を吹き飛ばし、JVCスタッフの心に響きました。私たちは、今まで地道に活動を続けてきた現地の人々の成果を無にするような今回の一連の暴力を強く非難する一方で、このようなお母さんたちの意志、地域ぐるみの動きを引き続き支えていきたいと思っています。

日本国際ボランティアセンター パレスチナ事業担当 津高政志