文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2023/08/25

【8月】火・土・風・水がともに暮らす町


 ディズニー&ピクサー映画の『マイ・エレメント』が好調です。

 舞台は架空の街・エレメントシティ。そこでは火・水・土・風のエレメント(元素)たちがそれぞれの文化的背景を持ちながら共棲しています。

 主人公のエンバーは火の女性。父親が営む食料品店に勤めています。父の望みは店をエンバーが継いでくれること。エンバーもそのつもりでしたが、水の青年・ウェイドと出会い付き合う中で、自分が本当に望んでいるのは店を継ぐことではなく、ガラス作家になりたかったのだと自覚するようになります。

 エンバーの父は、娘が他のエレメントと付き合うなど考えられません。中でも、水は火にとって大敵。その思考をエンバーは受け継いでいます。しかしウェイドの家族との交流を通して、エンバーの心は開いていき、自分の将来へも確たる希望を抱くようになるのです。

 ファンタジー仕立ての美しい映像とほのぼのしたストーリーで子どもも楽しめる作品です。しかしこれは、アメリカの移民物語でもあることを知ると、別の趣深さが醸し出されます。

 原案も手がけたピーター・ソーン監督は韓国人。両親が70年代にアメリカへ移住した移民二世です。監督の妻となったのは白人。2人が結婚に至るには、さまざまな文化的軋轢があったとのこと。軋轢の原因には,自文化へのこだわりとともに、相手への無知や思い込みがあったことも、この作品には反映されています。

 異なるエレメントの出会いによって街が豊かになり、街に新たな色が生み出していく物語がヒットしていることに希望を見ます。しかし映画館の外の現実世界を見渡すと、入管法改定や外国人労働者の処遇など、多くの問題が進行中です。他者への想像を怠ることは街や国や世界を矮小にしてしまいます。他者との共棲から生まれるものは、しばしば良くも悪しくも自分の想定を超えますが、それらを過度に恐れて忌避をするのはもったいないことです。

 もうすぐ9月1日です。100年前に起きた関東大震災の直後、朝鮮人・中国人(に間違えられた日本人も)が、デマに扇動された市民により数千人も虐殺されました。それは決して過去の特別な悲劇とは思えません。他者といかに向き合っていくか。『マイ・エレメント』のメッセージは現代日本に響いています。