平和人権/中東
平和人権/中東2014/08/11ツイート
アフガニスタン:髭の長老たち、奮闘
村の健康を守る!-髭の長老たち、奮闘
はじめに
私たち日本国際ボランティアセンター(JVC)は、アフガニスタン東部ナンガルハル県シェワ郡にある地方部のゴレーク地域という場所で地域保健医療や教育の活動を行っています。この地域は人口が2万5千人くらいの場所で、この中にさらに10ほどの村があります。
JVCはこのゴレーク地域で2つの診療所を運営していますが、アフガニスタンでは診療所を含む医療環境もすぐには改善されない状況の中、また、村人の中には住んでいる場所が遠く、道路の事情も悪いという状況もある中、予防などによる地域での保健の取り組みにも力を入れています。ここではその中でも、私たちが敬愛の念を込めて呼んでいる「髭の長老」たちの取り組みをご紹介したいと思います。
私たちの活動地の中でも、特に診療所がある2つの村では診療所と村との連携も進み、地域保健の取り組みを積極的に行ってきました。その取り組みのひとつが、髭の長老たちからなる「保健委員会」です。保健委員会とは、各村のリーダ的存在である長老たち(必ずしも年長者ばかりというわけではないものの、ほとんどのメンバーは髭が立派な年配の男性)が集まって、村の健康のためにできることを話し合い実施する、自治会のような存在です。写真は圧巻(!)の長老たちです。
「保健委員会」始動!-村の井戸と健康資料室の管理
これまでも定期的に集まっては保健の取り組みについて話し合い、村人たちに、ごみや水たまりの除去などを呼びかけるなどしてきた保健委員会ですが、そうした取り組みの一つとして、村人が共同で利用する井戸の管理を、まずは保健委員会が主導し、次第に村人たちが自主的に行えるようにしていけるような仕組みづくりを始めることを決定しました。
きれいな水を確保し、その衛生状態を保つことは、地域の健康を守り促進していくためには欠かせない要素です。水が衛生的でないために下痢が多く、水たまりからボーフラが発生してマラリアが頻発している村においては、なおさらです。また井戸自体の状態もよくない上に、村人たちがあまり衛生状態を気にとめないで、井戸まわりに生活用水が流れ込むようなことがあると、井戸の水も汚くなってしまいます。
保健委員会のメンバーは定期的に井戸水、井戸、その周りの状態をチェックしていくことに決めました。初日は風が強くとても寒い日の朝。保健委員のメンバーが集まりました。私たちJVCの地域保健担当の医師と看護師も同行しました。写真を見ても、皆の様子が寒さを物語っています。集まったメンバーで共同の井戸8つをまわり、水の状況や井戸周りの衛生状態を確認し、塩素で井戸の水を殺菌しました。塩素濃度を調べる際には、日本で調達して託してあった塩素チェッカー(検査器)を使いました。
その後、この活動は定期的に行われるようになり、調査・報告の様式(フォーマット)を使用しているほか、井戸の識別のため「井戸管理カード」をそれぞれの井戸に作成し、井戸所有者が保有、保健委員会のチェックの時に照合することにしています。
髭の長老たちの保健委員会の活動はその後も進み、さらに新たな大きな成果として、村人たちが気軽に集い、健康に関する資料などを手にすることができる「健康資料室」の開設に至りました。保健委員会の一人からの場所の提供を受けたうえ、皆でよい本を選んで本棚など共に購入、管理する人も選びました。資料室利用のルール、貸出票を作成したほか、すべての本に委員会のスタンプやラベルをつけました。少しずつですが、利用者が増えてきています。
写真:【左:井戸水や井戸周りの衛生状態を確認中。左から二番目はJVCの看護師。】
【右:健康資料室の開設の様子】
夏のマラリア対策キャンペーン!
私たちの活動地ゴレーク地域では、毎年暑さがピークの5月-7月くらいにかけて、マラリア患者が増えています。今年4月、JVCの診療所スタッフからデータとともにそのことを告げられた保健委員会のメンバーたちはある画期的な計画を立てました。その名も「マラリア対策 キャンペーン」。その内容とは…。
1.(ボーフラがわきやすい)水たまりを除去し、蚊帳を使うことを村人の間で徹底する
2. 昨年度のマラリア患者数と比較して今年はその数を減らすため、皆で予防の意識を高める
3. 村のすべての世帯を訪問し、マラリア患者の早期発見テストを実施する
4. マラリア感染が疑われた患者のその後の対処をサポートする
そして、数日後。村の中から、家庭訪問のためのボランティアの若者が11名選ばれました!ほとんどが高校生だそうです。適切なマラリア発見テストを行えるように、JVCの診療所スタッフから、マラリアについての基礎的な知識や診断ツールの使い方トレーニングを受けました。
トレーニングを受けたボランティアさんたちは2人一組となって、村全体を手分けして歩き回り、各家庭で過去2日間に熱を出した家族がいないかを聞 き、その人たちに試験紙を使ってマラリアの診断を行いました。その結果、村のすべての家族、約400家族(=約3,000-3,500人)を訪ね、55人が高 熱を出していることがわかりました。そのうち、試験紙でマラリア陽性と出たのが3件だったので、さらに診療所で見てもらうようにすすめ、早期発見につながりました。また、ボランティアさんは村の家庭を周りながら、マラリア対策のためにリーフレットも配りました。その中身も少しご紹介。
保健委員会がこのように、自分たちの村の健康のために活動できるよう、会議でファシリテータなどを務めて いる私たちの保健担当の医師(ワハーブ)が嬉しそうに報告してくれました。「今回のキャンペーンに参加してくれたボランティアの若者が、一銭ももらっていないのに地域に 貢献できてうれしい、またやりたい、と話してくれたのが感動した。保健委員会のメンバーがすべてを行うのは無理なので、これからももっと多くの村人ボラン ティアたちと力を合わせて活動を活発にしていければと思っている。」まだまだ課題や改善点はありますが、まずは、村人たちの間でこのような取り組みのいい前例が 作れたことは、私たちの目指す”地域からの病気予防”の大きな進展です。
これからもぜひ、私たちが敬愛する髭長老たちの保健委員会の活動にご注目ください!