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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2022/12/01

【11月】W杯から:「らしさ」からの解放


 サッカーワールドカップが開催中です。今回は番狂わせの結果が多いと評されていますが、番狂わせではなく、各国のレベルが接近していることの現れとみるべきでしょう。

 カタール大会、日本のテレビ報道では試合の結果とそれに一喜一憂するサポーターの姿ばかりが報じられていますが、各国からは、運営への様々な問題点が開会前から指摘されています。

 まず第一に、大会開催へのインフラ整備工事で、多くの外国人労働者が事故や過酷な労働条件により命を落としているという事実です。その数は15000人にのぼるだろうと英紙ガーディアンは報じています。また、カタールでは性的少数者が法的に規制されていて、発覚した者は逮捕の後に拷問がなされます。

 それらを問題視したドイツ連邦議会では、サッカー中継のボイコットも検討しましたが、問題解決の方法としてはボイコットより継続的な関心喚起が有効であると落ち着いたようです。日本戦の前にドイツチームの選手たちが揃って口を覆ったポーズをとりました。これは、チームのキャプテンが「ワンラブ」腕章を付けようとしたのに対してFIFAがイエローカード対象とすること、及び差別反対の言論を抑圧したことへの抗議でした。「ワンラブ」腕章は、あらゆる差別に反対し、多様性と寛容性を象徴したものでした。ドイツチームが背負っているのは、「国の威信」や「国民の感動」だけではないのです。それらの行動が、遠からぬ先に、カタールの人権状況改善への一助になることを心から期待します。

 さて、日本チーム。以前は、代表チームの戦い方を「自分たちのサッカーを目指す」と表現していたことがよくありました。「日本らしさ」が上手く出せればいい結果が生まれると。それはいつしか言われなくなりました。「らしさ」などと冠する必要などそもそもなかったのです。「自分らしく」と設定したときの「自分」は、しばしば迷走しがちです。「らしさ」から離れて、今の自分を大切にできているか。サッカーからいろいろ考えます。(アーユス)