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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2020/12/25

【12月】国語辞典が伝える言葉の現在地


 かつて、著名国語辞典の改訂がニュースになった時代がありました。
 代表的なのは『広辞苑』。注目されたのは新たに収録された言葉です。広辞苑に収録されたことは公に流通する言葉として承認されたことを意味していました。かつて辞書は「正しさ」の基準であり、権威そのものでした。
 辞典の改訂が話題にならなくなって久しくなります。それは、世間における「権威」の軽視、さらには反感とリンクしており、その文脈上に、今も続く学術会議任命拒否問題があるというのはうがち過ぎではないと思います。
 そんな中、先日『新明解国語辞典』の第八版が発売になりました。
 言葉の「正しい定義」とともに「現在の用法」を示すことにより根強い支持を得ている同辞典。今回の改訂では、「コロナウイルス」や「エッセンシャルワーカー」が収録されたことが目新しいですが、注目したい新語は「ヘイト」「ヘイト クライム」「ヘイト スピーチ」。いずれも第七版には収録されていなかったのが見出し語となり、「卑劣な」という厳しい表現の語釈がされていることを評価したいと思います。
 そして『新明解』と言えば注目されるのが「恋愛」の語釈。第三版での「特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、できるなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態」という語釈は同辞典の名を一躍高めたものでしたが、第八版からは「特定の異性」が「特定の相手」と書き替えられたことに注目します。
 現在の国語辞典は「正しい定義」の基準とともに、「言葉の現在地」を示すものとなっているのです。語釈が社会を映す鏡となっています。その目から『新明解』で「国際協力」を引いてみると・・・見出し語も派生語もなし。「NGO」は?単に英語を訳しただけでした。それがそのまま社会の関心の反映とまでは解釈しないでおきましょう。