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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2015/06/12

民政移管はいかに。民主化運動を続けるビルマ僧侶に聞く。


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ビルマの民政移管はいかに。民主化運動に参加した僧侶に聞く。

 2012年、ビルマは長年にわたり続いた軍事独裁政権に終止符を打ち、民政移管が始まりました。と、断言していいものかどうか。軟禁状態におかれていた、アウン・サン・スーチー氏を解放し、政治に参加させたのは民主化が飛躍的に前進したと言えるのでしょうが、内実はどうなのでしょうか。

 政治囚として収監されていた2人の僧侶が来日され、お話を伺う機会を持ったところ、お2人とも実際に政権の座についている人達は軍人であり、国民に民主化の恩恵は行き届いていないとお話されました。

 ウ・エインダカ師は現在、メギン僧院の住職を務めていらっしゃいますが、1990年から1995年の間と、2007年から2012年までの間、刑務所で過ごされました。どちらの場合も、民主化運動に参加したために投獄されています。もうお一方、ウ・ドンダラウォンタ師は、89年の民主化運動で収監され、その後2011年まで獄中で過ごされた方です。

 収監されている間、袈裟を無理矢理脱がされるという強制還俗させられたこともありますが、投獄されている間も仏教の教えを忘れることなく、他の囚人たちの精神的リーダーで在り続けられました。

 お2人がまず口にされたのは、現在のビルマは確かに民主化が進んだようには見えるが、内実は変わっていないということです。民政移管されたとはいえ、国会の4分の1議席は軍人が占める中、軍事政権の色合いは濃いままだといいます。憲法も民主的に制定されたものではなく、国民を様々な被害や搾取から守る法律も整っていません。

 ですから、現在、海外からの投資が急増し、様々な開発事業が展開されていても、経済の恩恵は上部が国民に届くことはなく、むしろ人権が守られない状況が起きているとのことです。それは、アーユスが協力している、「ティラワ経済特別区開発」における大規模開発事業に伴う環境社会影響の回避・軽減に向けたアドボカシー活動が報告していることからもわかります。開発事業に伴い移転を強いられた人達の保障は十分にほどこされていない上に、開発事業がもたらす環境への影響もきちんと配慮されていないのは、法整備が十分にされていないことが原因の一つではないでしょうか。2人のご僧侶は、口を揃えて投資の前に法整備を求められていました。

 民政化が進んだことで現れた変化もあります。一つは、それまで声をあげることが許されていなかった農民たちが、自分たちの主張を言うことができるようになったことです。上記のティラワでも、住民が現地で反対の意を表明したり、来日して開発元のJICAに申し入れをしたりしたことは、以前のビルマでは考えられなかったことですし、大きな進展であるといえると思います

 しかし一方で、民政移管後に収監された政治囚が500人以上いるそうです。この間の開発事業に反対運動した人達、それをサポートした僧侶たち、そして教育改革を求めて立ち上がった学生たちなどです。政治的に声をあげたことを理由に収監されるのであれば、やはり民主化されたとは言えないでしょう。

 お2人の僧侶は、このように社会運動や社会活動に積極的に関わられ続けてきているのは、一重に仏陀の教えに従っているだけだそうです。現在は、それぞれお寺での教育活動や福祉活動を進めていらっしゃいます。そして困難を強いられている民衆を支え、状況が改善できるよう共に声をあげておられます。お2人がまず口にされたのが、現在起きているビルマでの開発問題であったのは、とても印象的であり、衝撃的でもありました。日本のお坊さんが海外にいって、まずこのような問題を口にされているのは正直なところ想像しづらい・・・。

 1990年、そして2007年に起きた覆鉢運動(注:托鉢の鉢を逆さまにし、あなたからは布施を受け付けないというある種のボイコット運動)は、まさに仏教の教えに根ざして、弱者の側に立った社会運動だったと思います。

 今回は、限られた時間の中でのお話だったために、十分にお話を伺えなかったのが残念です。
お2人の仏教観、ロヒンギャ問題など、次回はもっと深くお話を伺いたいと思います。また開発援助に関わるNGOにもぜひ聞いてもらえればと思います。(m)