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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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福島/脱原発/東日本

福島/脱原発/東日本2013/10/31

10/23-24 南相馬を訪問しました


 10月23日と24日の2日間、福島県南相馬市で仮設住宅でのサロン活動の取り組みや立ち入りが制限されている南相馬市小高区と浪江町の現在の様子、さらに放射能測定センター・南相馬「とどけ鳥」の活動について視察してきました。

  今回の目的は、アーユスが継続して協力させていただいている日本国際ボランティアセンター(JVC)の南相馬における仮設住宅でのサロン活動の現状を把握し、今後の支援について検討すること。そして、新たな支援の候補になっている活動について関係者から聞き取りを行い、今後の支援の可能性について考える、 という2点でした。

 はじめに訪れた南相馬市鹿島区の仮設住宅では、サロン活動を行っている地元団体の方からお話を伺いました。福島第一原発の事故で緊急避難しなければならないという状況の中、着の身着のままでとにかく避難したものの、放射能汚染に関して全く情報がない中で線量が高い飯舘村に避難し、高濃度の外部被爆にさらされてしまったこと。同じ避難所といえども状況は全く異なり、 比較的救援物資に恵まれていたところもあれば、4人で一つのおにぎりを分け合わなければならないなど相当な苦労を味わった人たちも大勢いたこと。避難先が10ヵ所以上転々としてようやく今の仮設住宅に入れた人がいたこと。経験した人でないと分からないことを伺うことができました。

 いま南相馬では瓦礫撤去ぐらいしか仕事がなく、それも短期契約であるためいつ失業してもおかしくない不安定な雇用状況が続いているとのこと。また、原発から20キロ圏内で津波被害にもあった小高区の住民が故郷に戻るのをあきらめ、北側の原町区や鹿島区に移住するケースが増えてきたため土地代が高騰し、仮設住宅から移り住めない人が大勢いることなど、南相馬は多くの困難を抱えていることが改めてよく分かりました。さらに鹿島区の病院が仮設住宅の住民も利用するため慢性的に混雑するようになり、鹿島区の住民が不満を訴えるなど、住民同士の関係も複雑になっていることを聞かされました。小高区でもようやく除染が始まっていますが、既に当初の計画から1年半以上遅れていて、今後も住民が原発事故前の生活を営めるようになるには相当長い期間がかかることが予想されます。

  2日目は、地元の方の案内で浪江町の中で立ち入りが制限されている地域に入り、原発事故からそのまま時間が止まったような現在の状況を見てきました。ここに立ち入るには特別な許可証が必要です。地震の影響で崩れかけている民家や店舗がそのままの状態で置かれていて胸が締め付けられるような感情を覚えました。特に、3月12日付けの新聞が配達されることなくそのまま大量に積まれている光景は忘れられません。ここでの放射線量は手持ちの線量計で1.0uSV/h以上を記録していました。

 2日目の午後は、放射能測定センター・南相馬 「とどけ鳥」で、原発事故直後から南相馬市で線量マップ作りや食品・飲料水・土壌の放射線測定などの活動を行っている、チェルノブイリ救援・中部の方にお話を伺いました。線量マップづくりのため、これまで5回に渡って南相馬市1000ヵ所で空間線量を測る調査を行い、それを南相馬市全域の地図にメッシュ状に落とし込んだ地図を作成してきました。5枚の地図を見比べると、原発事故直後から現在まで線量が急激に下がっている状況がひと目で分かりました。浪江町の測量もこの4月から開始されました。また、住民や業者からのニーズがある食品・飲料水・土壌の放射線測定も継続して行われています。南相馬市は食品の検査のみ実施していて、予約制で1人1検体に限られています。飲料水・土壌の検査は行われていないそうです。

 その他、チェルノブイリ救援・中部では、南相馬市で放射能に汚染された農地に菜の花を植えて除染を試みるとともに収穫した菜種油をバイオディーゼル燃料として使えるように精製し、地域作りに活かしていこうという取り組みを地元の人たちと協力して行っています。実際にこれから菜の花を植える予定の農地も見学させていただきました。将来的には食用油としても販売できるように考えているとのことで、福島を食用油とバイオディーゼル燃料の一大供給地にしていきたいという思いがあるそうです。お話を伺っている限りでは何となく実現できそうなプロジェクトのように感じられました。技術的には十分可能だそうですので、あとは資金をどれぐらい集められるか、このプロジェクトに賛同する人をいかに集められるかに尽きるかと思います。

 以上、駆け足で南相馬の現状を見てきましたが、苦しくて厳しい状況にありながらも、それを乗り越えようとする南相馬の人たちの思いに触れることができました。こうした気持ちは福島をはじめ、東日本大震災の被災地全体で感じられるのではないかと思います。これらのエネルギーが一つになって、本当の意味での持続可能な素適な社会になったらと思います。アーユスも微々たる存在ですが、少しでも福島の人たちのご協力に結びつくような活動を行っていき、ともに歩んで行けたらと考えています。

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