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福島/脱原発/東日本

福島/脱原発/東日本2012/10/15

東日本:シェアの宮城県での保健医療活動


東日本シェア

宮城県気仙沼市で保健医療活動

シェア=国際保健協力市民の会

 地震直後は被害があまりにも広範囲な上に原発の問題が加わったために、シェアのような小さな団体に何が出来るのか議論を重ねました。そして、まずは3月18日より宮城県名取市の東北国際クリニックに医師・看護師を派遣することになり、同時に調査も実施しました。/p>

 その結果、3月28日以降は、気仙沼市での中長期の保健医療活動を実施しています。同市には「気仙沼市巡回療養支援隊」というチームができており、シェアはそこの健康相談班の一員として参加しています。避難所の医療に関しては既に緊急の医療チームが入っていたために、ある程度大きな避難所の医療ケアはカバーされていました。そちらの方に地元の保健師さんも全員入っていらっしゃいます。/p>

 そこで問題になるのが、在宅のまま必要なケアを受けられずにいる方々のことです。健康相談班は、それまで保健師さんや在宅看護ステーションのヘルパーさんが訪問していた家庭に焦点をあてて、活動することにしました。私たちがチームを組んで訪問看護を行っています。

 その他にも地元の保健行政のサポートということで、家庭訪問しながら調査をおこない、その結果を気仙沼市の健康増進課や高齢福祉課などに伝えています。その他に、もともと地元にある介護施設や訪問看護ステーションも、従来の活動ができるように支えています。

 もともと気仙沼市には、訪問看護ステーションが2カ所あったのですが、そのうちの一つは津波で建物が流されてしまいました。患者さんのファイルやデータも無くなりました。最初は何が必要ですかと聞いても、遠慮して答えてくださらなかったのですが、信頼関係を築いていくなかで、患者さん宅を訪問するための車が欲しいことがわかり、車を3台レンタルし貸与させていただきました。その他は、メモがないから記録がとれない、ファイルがないと書類の仕分けができないということで、かなりの文房具も持っていっています。

 訪問看護ステーションから遠すぎて訪問できないところに、医師を派遣したこともあります。もともと介護が必要な方は家族がお世話されていることが多いのですが、訪問することで精神的に安心されるようです。派遣した医師は、東京の山谷地区で働いているのですが、そこに比べるとまだまだ気仙沼では家族が手厚く介護していて、逆に驚いたようでした。

 この事業は、シェアだけではなく、宮城県、徳島県、兵庫県からのチームと合同で行っています。シェアは訪問もしますが、全体の調整役も担っています。

 まだ一ヶ月しか経っていませんが、学びも多くありました。まず、すぐに活動を開始できたのは、普段からのネットワークを生かした協力体制が作れたからです。アーユスからの初動金は、大きな後押しとなりました。また、アーユスのネットワークのお蔭で、物資を運ぶトラックや宿泊所などをすぐに確保できたのは大きかったです。そして、阪神淡路大震災、新潟県中越沖地震における支援活動経験があったので、活動のシミュレーションがすぐに作れたのだと思います。

 一方で、本来の国際協力事業に支障を来さないようにもしなければなりません。スタッフの役割分担、資金調達など同時に取り組まないといけないことはたくさんあります。

 シェアが大事にしているのは次のことです。地元の人に寄り添い、自分たちは常に黒子であることです。また被災者の方の生計を立てることの邪魔をしないことも大切です。例えば、無料診療は医療を必要としている被災者の立場からはよいことなのですが、同じく被災から立ちあがろうしている現地の開業医の方々の立場から見ると、地元の医療復興の妨げとなるかもしれません。あくまでも復興の中心にいるのは、地元の人たちです。

 シェアは、今後も地元の方の力が発揮できるよう、長期的に活動を続けていきたいと思っています。
(2011年4月14日、アーユス春合宿での報告より。報告者 西山美希。文責 枝木美香)