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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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福島/脱原発/東日本

福島/脱原発/東日本2012/03/01

原発に関するアーユスポジションペーパー


東日本大震災被災地支援と原発問題に関するアーユスの取り組みと姿勢

2012年3月1日

アーユス仏教国際協力ネットワーク

 東日本大震災が発生してから、1年近くが経とうとしています。この間アーユスは、岩手県、宮城県、福島県の各被災地において、炊き出し、物資支援、保健医療、心理ケア、雇用促進、災害FMの運営、幼児保育などの支援活動を行うNGOをサポートしてきました。また、仏教関係の人たちと共に避難所や被災寺院で炊き出しや清掃などのボランティア活動を行い、福島第一原子力発電所の事故によって放射線量が高い地域の子どもたちが外で思い切り遊べるように、山梨県富士吉田市の寺院のご協力で夏合宿を実施しました。

 アーユスは、これからも被災地で活動しているNGOと適宜連携することで東日本大震災被災地支援に関わっていきますが、今後は特に福島県での活動、及び原発問題と新エネルギーへの転換に向けた啓発・提言活動に力を入れて取り組んでいきます。

● 原発問題をわたしたちの問題として

 福島県は、地震、津波の被害に加えて、原発事故による放射能汚染やその風評被害にもさらされています。住民の外部被爆と内部被爆の危険が高いだけでなく、農業や漁業、観光業などへの打撃も大きく、原発事故がもたらした災禍の規模は図り知れません。

 この事故は、東日本大震災が引き金となって福島でおきましたが、日本の他の地域にあるどの原発でも起こりうる事故でした。「安全神話」のもとに推し進められていた原子力発電の脆弱さが、多くの人たちの苦しみを伴って露呈されたのは、残念でなりません。今回の事故で、原発がいかに危険であるのか、放射能による汚染がわたしたちの生活と暮らしに多大な影響を及ぼすことを思い知りました。わたしたちはこの事故がもたらした多くの問題を自分たちの問題として受け止めます。環境破壊、命を守る権利、人権、エネルギーの大量消費、地域の経済格差など、現代社会が直面している様々な問題を生み出した社会の一員として、原発事故に伴う諸問題について真剣に向き合っていきたいと考えています。

 また、今回の事故により、福島の人々が多大な苦しみと困難を強いられています。放射能の影響を受ける人たちの被爆の危険が少しでも緩和し、安全な生活環境が作られることに協力していきます。福島で起きたことを看過することなく、わたしたち自身の問題とし、それに向き合うためにも、福島の人たちとつながり、福島の人々の声に耳を傾けることを大切にしたいと思います。

● アーユスのめざすところ

被爆の危険を緩和する

 既に3万人以上の人々が、福島県から県外に避難をしていると言われています。しかし、放射線量が高くても、経済的な理由や家族の事情など様々な理由から、福島で生活を続けている人たちも大勢います。

 アーユスはその中でも特に子どもたちが、放射能の危険が少ない環境で遊び学べる時間が増えることを願い、そのための活動を支援します。具体的には、春休みや夏休みなどの長期休暇中に、県外での合宿を企画・実施します。また、安心な食べ物を福島の子どもに送るプロジェクトにも協力しています。これからも、適宜、子どもたちのための活動に協力していきます。

地元産業を支える

 放射能汚染は、農業や漁業に深刻な打撃を与えました。実際に農作物から放射性物質が検出されたために、福島県ではいくつかの農産物の出荷が停止となりました。また一方では、放射性物質は検出されていないのにもかかわらず、福島県産という理由だけで買ってもらえないという風評被害も出ています。

 一度放出された放射性物質は、簡単に消えることはありません。拡散するか移動するだけです。農作物への被害も、福島県だけにとどまらずに広がっています。福島原発の事故以来、私たちは放射能と共にどう生きていくかということも考えなくてはいけなくなりました。

 そこで、必要となるのが線量計です。特に、農作物の放射線量を計るベクレルモニターなどがあれば、自分たちが作った農作物や自分たちが食べる物を計ることができます。有機農家のグループや、農産物直売所などでこのような線量計の必要性が高まってきています。アーユスは、線量計の支援を手始めに、福島の地元産業が元気を取り戻すためのお手伝いを行っていきます。

原発輸出反対

 福島の原発事故があったにもかかわらず、日本は原発を海外に輸出しようとしています。いまもなお事故の処理に追われ、事故原因を十分に検証することなく、安全性が保証されていない原発を、環境的にも技術的にも受け入れが不十分な国に送ってはならないと思います。

 特に、途上国の市民は、原発に関する十分な情報を得ることもなく、主体的にエネルギーの選択を行っているわけではありません。日本が原発を輸出するのではなく、原発の問題を広く国際社会に提起し、自然エネルギーを国内外で推し進めていく政策を実現させるための働きかけをしていきたいと思います。

福島の経験の保存と積極的な共有

 福島での出来事は、人類がこれまでほとんど経験していないことです。仮に不幸にも同じような事故が起きた場合、福島の経験はより良い対応策を生み出すための重要な情報となります。また、同じような事故を繰り返さないためには、事故が人々の暮らしや環境に及ぼした被害状況、そしてこれまでの「安全神話」に支えられた原発の脆弱性などが、きちんと記録され伝えられることが大切です。

 これらの情報は、これから原発が建設されようとしている国や地域の人々が、受け入れの是非を考える材料にもなり、日本語のみならず他の言語でも記録し海外に向けて発信されることが重要だと考えます。アーユスは、そのための取り組みを応援します。

脱原発社会の実現

 仏教では「少欲知足」という教えを大切にしています。この教えに従って、アーユスは、脱原発を目指した社会作りのための活動を応援します。現在の日本社会は、原発によってエネルギーだけではなく、原発を誘致することで地域経済も潤うという強固な依存構造が存在します。脱原発を目指すためには、原発にただ反対するだけではなく、原発がなくても暮らせる社会や経済のあり方を提示していく必要があります。

 そのためには、自然エネルギーを中心とする社会作りのための法案に賛成し、推進していきます。また、海外で持続可能な社会をめざして活動しているアーユスのパートナーNGOと共に、これからの日本社会のエネルギー政策を考え、大量消費型の生活スタイルを見直す場を寺院や地域社会に作っていきます。またそのための教材作りなども進めていきます。