アーユス賞
第12回(2025年度)アーユス賞受賞メッセージ

写真左から、アーユス理事長・松本智量、江上彰さん(今村公保さん代理)、池田織枝さん、大橋怜史さん、沢田貴志さん、下鳥舞佳さん、水原修平さん
第12回アーユスNGO大賞(茂田賞)
沢田貴志(さわだ・たかし)さん
港町診療所所長、シェア=国際保健協力市民の会理事
◆授賞理由
日本に暮らす外国人が安心して医療を受けられるよう尽力されてきたのが、沢田さんです。1991年より神奈川県横浜市にある港町診療所に勤務し、たくさんの外国人も診てこられました。外国人の中には、医療費や言葉の問題などから、心身に問題を抱えていても病院に行くことができない方がいます。どんな人であっても医療を受けられるために、沢田さんは医師として診療のみならず、日本国内で在住外国人の課題に対応している団体との連携のもと、医療通訳を始めとする制度構築や人材育成に邁進してこられました。現在も、まだ日本に暮らす外国人の方々が十分に医療を受けられているわけではありません。しかし、沢田さんの長年の取り組みがあってこそ、希望を失わずにいられる人が数多くいるのは確かです。ここに、沢田さんの長年にわたる活動に心から敬意を表し、大賞を授与します。
◆沢田さんからのメッセージ
この数年、自身の取り組みにある種の壁を感じている中でしたのでアーユス大賞のお話を頂いたいときには寝耳に水の思いでした。思い返せば2000年代の日本は、日系人や日本人配偶者など外国ルーツの住民の増加と共に行政も多文化共生社会を推進していました。私たちが連携する自治体でも医療通訳を公的に整える制度が進み、外国生まれ住民への医療に目に見えた進展がありました。しかし、2008年のリーマンショックや東日本大震災の後は状況が変わりました。多文化共生政策が後退し技能実習生や日本語学校生など短期間のビザで働く労働者が増える中、行政のサービスはむしろ後退しているところがあります。特に昨年からは排外主義的な主張が社会に広がり、多数の外国人が医療を不適切に利用しているかのような誤った情報がSNSなどで流布されました。近年、残念ながら国際社会にも少数者を切捨て人種や宗教の違いをあげつらい、排除しようとする風潮が広がっています。このような社会的不寛容の広がりは紛争を戦争に発展させ、貧困や不健康の蔓延につながることが危惧されます。SDGsが指し示すように格差をなくし公正で争いのない社会を作ることこそが地球環境の維持と安定した社会の構築に不可欠です。今回の賞は、私たちに保健医療という場でこの役割を担うようにという叱咤激励であると考え、気持ちを引き締めて取組を続けていきたいと思います。
◆受賞記念講演のアーカイブ
アーユスNGO新人賞(奨励賞)
池田織枝(いけだ・おりえ)さん
特定非営利活動法人 ジェン(JEN) 広報・ファンドレイジング担当
◆授賞理由
パキスタンやアフガニスタンなど、長期化した人道危機に対しては関心が薄れがちですが、池田さんは広報担当として、そうした現場の声も正確に、そして温かく届けてくれます。まさに光の当たらないところに光を当て、その多様な文化や価値観を共感と共に伝えてくれています。池田さんの誠実な活動は、世界各地への深い理解を日本の私たちに促すだけでなく、現場からの信頼を得ることにも繋がっています。日本の国際協力業界における大きな力となることを期待します。
◆池田さんからのメッセージ
この度は、このような身に余る賞を授賞させていただき、大変ありがとうございます。ジェンが支援活動を行っているアフガニスタンは、人口の約半数が人道支援を必要とする危機下にあります。パキスタンは、2022年に起きた大洪水の影響が続く中、毎年のように甚大な洪水被害に見舞われています。こうした中、人びとの自立を支える力となるため、一丸となって取り組む現場スタッフのチームが、私たちの活動の屋台骨です。私は現場や人びとの声や取り組みに耳を傾けるメッセンジャーとして、たとえ微力でも、平和な世界をつくるための活動に貢献できるよう、努めていきたいと思います。活動を支えてくださる全ての皆さまに心より感謝いたします。
大橋怜史(おおはし・さとし)さん
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター イエメン・スーダン事業担当
◆授賞理由
大橋さんは、学生時代から南米の国々でボランティアやNGOスタッフとして支援活動に携わり、自ら語学も積極的に学んでこられました。中東で支援活動をしたいとの思いからJVCに入職、イエメンやスーダンの活動に従事しています。問題を根源から解決したいという姿勢は、日々の活動に追われながらも現地の人々とのコミュニケーションを大切にしているからこそのものです。これからも「困難な状況にある人々を支えたい」という思いと、それを行動に移していく積極性に期待します。
◆大橋さんからのメッセージ
この度は、新人賞を頂き、誠にありがとうございます。まさか自分が受賞できるとは思っておらず、驚きとともに大きな励みをいただきました。これまで自分の気持ちになるべく従ってとりあえず突き進み、様々な経験をさせていただきましたが、多くの方々に支えていただいたおかげだと思っています。私にとって国際協力は生涯のテーマであり、最大の難問だと思っています。まだまだ学ぶべきことも多く、ようやくスタートラインに立ったばかりですが、これからも粘り強く挑戦を続けたいと思います。これまでご指導・ご支援、そして温かい応援をくださった皆様に心より感謝申し上げます。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
下鳥 舞佳(しもとり・まいか)さん
特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会 広報部
◆授賞理由
下鳥さんは、大学で学んだデザインと、ネパールへの強い愛情を最大限に生かしてシャプラニールで活躍されています。下鳥さんのゼロから新しいことを生み出す力は、シャプラニールにそれまでにない共感と反響を集めるようになりました。その創造力とチャレンジ精神は、NGOへの共感の輪を新たな層へと広げています。下鳥さんの異文化への好奇心や愛情、そして現地の人たちと対等に向き合う姿勢は、これからの国際協力に新しい風を吹き込むことでしょう。

- ◆下鳥さんからのメッセージ
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この度は、名誉ある賞をいただき誠にありがとうございます。
このような賞をいただけたのは、さまざまな挑戦の機会を与えてくれたシャプラニールの皆さん、活動地の方々、日々応援してくださる皆さまのおかげです。
広報業務に取り組む中で、自分が想像していた以上の形で共感・行動の輪の広がりが生まれることもありました。団体名「市民による海外協力」の通り、一人ひとりの小さな心の動きが重なった時に生まれる力は本当に大きいものだと感じています。分断の強まりを感じる今の社会の中でも、世界と人とのつながりが生むポジティブな側面が失われないよう、今後ともさまざまな角度から表現・発信を続けていきたいと思います
水原 修平(みずはら・しゅうへい)さん
特定非営利活動法人 IKUNO・多文化ふらっと 多言語相談事業責任者・事業企画担当
◆授賞理由
差別で人が傷つかず、「違い」を個性ととらえて、支えあう社会をめざしたいという水原さんの思いは、ご自身の個人的な経験も踏まえて、とても強いものです。IKUNO・多文化ふらっとでは、様々な国籍や文化的背景を持つ人たちとの出会いから、多言語相談事業を立ち上げ、外国人住民の日常的な生活課題への不安や孤立感を軽減させることに貢献されています。水原さんの感性と活動は、日本で多文化共生社会を広げるために貴重な役割を担うことを確信します。

◆水原さんからのメッセージ
この度は、大変名誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。 これまで、多言語相談窓口の立ち上げや、大阪市生野区に在住する外国人の実態調査、政策提言事業に携わってまいりました。その過程においては、当事者の方々はもとより、多様なセクターへのアウトリーチを行い、相談支援を通じて連携・協働の機会をいただいてきました。 今回の受賞は、こうした多様な関係者の皆様、そしてスタッフやボランティアの皆様とともにいただいたものと受け止めております。 今後は、生野区を「課題最先端地域」から「希望を生み出すロールモデル地域」へと転換していく挑戦を通じて、現代社会における新たな希望の創出に全力で取り組んでまいります。
アーユス特別功労賞
今村 公保(いまむら・きみやす)さん
日本山妙法寺大僧伽上総道場
◆授賞理由
今村さんは、長年にわたりアーユスの会計や庶務を手伝ってくださりました。アーユスが組織として危機的な状況に立ち、山積みの仕事を前に途方にくれた時も、今村さんが補佐に入ってくだったおかげでどうにか前に進むことができました。アーユスが今もなお存続しているのは、今村さんのお陰と言って過言ではありません。 また職員の愚痴や悩みを聞いてくださり、社会情勢についての豊富な知識と見識から事業の相談にも乗ってくださりました。これまで本当にお世話になりました。感謝の気持ちを込めて特別功労賞をお贈りいたします。

◆今村さんからのメッセージ
「アーユスとの関わりが永いというと言うだけなのに、、、」と特別功労賞受賞を告げられた時は思っていたのですが、頂いてからは「関わりの永さ」も、それなりに「功労」になるんじゃなるかな」との想いも素直に思うように成っている昨今です。
私の仏教との御縁は、自身が熱心な仏教信仰者であった母親の影響で有るのは間違いありません。
しかし、視界に入る日本の仏教界の有り様には、疑問や不安をそこはかとなく感じるようになりました。まして、その教義が、複雑化している近代社会の持つ問題に対応し得るのか、漠然とした不安感が高まっていきました。“宗教の特性は「社会」の中でこそ明確になり得、そしてその効用が発揮され、所謂「衆生済度」が可能になるのではないか” と。
日本山妙法寺で出家してからのち後数年は、主に国内で平和行進(行脚)の修行でしたが、米国ボストン近郊に仏舎利塔建立のお手伝いに行った時にバングラデシュのジュマ民族の御出家と出会い、その惨状を知り先住民族問題に関わるようになりました。その関連でアーユスとの御縁を得ることになりました。
アーユスの活動こそが、宗教の効用を発揮させ、衆生済度を可能にすることだと思います。その活動に関わればかかわる程、その思いは深まりました。少なくとも宗教が本来持つべき社会性を充分に担保するきっかけになるのは、間違いありません。NGO存在が欠かせない事も重要な要素だと思います。





