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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の寺

国際協力の寺2015/11/09

萬福寺ミニツアー:竜の背骨を踏まずに歩く


布袋さま10月30日、京都の宇治市にある黄檗宗の大本山「萬福寺」にてミニツアーを行いました。案内役は、会員で黄檗宗自敬寺のご住職でもある服部隆志師。参加者はお坊さんやNGO関係者、自敬寺の檀家さんなど、総勢16名。アーユスと関わらなかったら、一生顔を合わすことがなかったメンバーです(笑)。

12190857_10206201689493444_6756018818235152009_n黄檗宗は禅宗の一派で、萬福寺を開創したのは、中国明朝時代の臨済宗を代表する僧であった隠元禅師。日本からの度重なる招請に応じ、なんと63歳のときに、お弟子さん20名とともに、日本に渡ってきてくださった方で、国際協力の大先輩でもあります。 

当時、萬福寺は仏教だけでなく、中国の最先端の文化や技術を体験できる場でもありました。美術や建築はもちろん、煎茶もここから普及していきましたし、いんげん豆・西瓜・蓮根、それに木魚なども隠元禅師が来られてから日本にもたらされました。

中国風の寺院というと、きらびやかなものを思い浮かべますが、萬福寺はかなりシックなたたずまいです。境内には松の木が多く、落葉樹の割合が少ないため、「紅葉シーズンでも観光客が少ない」と服部師は自虐的におっしゃっていました。

ツアーは境内散策、坐禅体験、普茶料理の昼食と黄檗宗関係者との歓談、鉄眼一切経の版木6万枚を保管している法蔵院の訪問という構成で行われました。どれをとっても盛りだくさんな内容なので、今回は私が特に印象に残ったことを二つ記します。

萬福寺総門前まずひとつ目は、総門からのびる参道。ここに敷かれた菱形の敷石は龍の背骨を表しているそうです。実は、この参道はまっすぐではありません。「悪いもの/邪なもの」はまっすぐにしか進めないため、外からの邪気が入って来られないよう、わざとカーブをつけてあるそうです。以前、神社でも同じような話を聞いたのを思い出しました。

正義を振りかざして、まわりを顧みずに猛進しがちな私たちNGOは、実は邪なのかもしれません。「良いもの/聖なるもの」は龍の背骨のようにしなやかで、うねりながら進んで行くものなのかも、と気付かされた瞬間でした。ちなみに、この龍の背骨にあたる敷石を踏んでいいのは、聖人だけということです。踏まずに歩くということは、龍の背骨に沿いながら歩くといくことでもありました。

一切経印象に残ったことのふたつ目は、法蔵院で知った鉄眼禅師の生きかた。禅師は、一切経(全てのお経を網羅した、壮大な百科事典のようなもの)の開版(版木を彫って印刷すること)という、国家事業並みの大仕事を成し遂げたため、印刷技術のパイオニアとも言われています。ちなみに、私たちが日頃お世話になっているフォント「明朝体」の元祖はこの鉄眼版一切経の字体です。

ただ、禅師は出版事業を行っただけの人ではありません。むしろ救済の人として記憶されるべき方です。なぜなら、全国を行脚して集めた開版の費用を、一度ならず二度も大洪水の被害や大飢饉に苦しむ住民のために投げ出しているからです。志を捨てることなく、執着から離れ、慈悲を行う。おそらく現在のNGOの在り方だと、そのような対応はかなり難しいと思いました。「アカウンタビリティが・・・」とか「中期目標の達成率が・・・」などといって、飢えている人を尻目に、とにかくお経を刷ってしまいそうな気がするからです。迷ったときのロールモデルとして、心に留めておきたいと思います。

さて、4時間のミニツアーはあっという間でしたが、服部師の軽妙なトークのおかげで、いろいろな学びができ、参加者の皆さんも大満足でした。蛍の放生会やお茶会など、素敵な催しも多いので、参加者それぞれに再訪を誓いつつ、家路につきました。(三村紀美子)