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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の寺

国際協力の寺2016/11/18

千日前フィールドスタディ:護摩の炎が照らす刑場跡の未来


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現在は歓楽街として知られる大阪の千日前ですが、明治になるまでは刑場や火葬場が置かれ、墓地が広がる場所でした。また、道頓堀開削でも多くの犠牲が出ていますし、空襲でも多くの方が亡くなっています。

講師をお願いしたのは、地元にある劇場の経営者でありながら、出家して真言宗山科派の僧侶になった鳥居弘昌師。開発の波により、多くのお寺が転出していった後、千日前のビルに弘昌寺を開き、鎮魂のために毎日護摩を焚かれています。

プログラムは、鳥居師のお話、街あるき、そして護摩供養という構成で行われ、過去だけでなく現在や未来、建物や人間を含めた丸ごとの千日前を経験することで、地域の見方を複眼的にできればと考えました。

意図を汲んで下さった鳥居師のお話は、ご自身の人生と千日前の歴史が互いを織りなし合ったサーガのようでした。千日前で旅館を営んでいた両親の死後に自分が養子だと分かったこと。親孝行のための得度が、地域の鎮魂へとつながっていったこと。処刑されたキリシタンの鎮魂にも関わるようになってから、自分の先祖が隠れキリシタンだったと判明したこと。千日前だけに留まらない大きな縁がそこに働いているように思えました。

また、過去や死者に向き合うだけで終わらせず、そこから未来を切り拓いているところにも、参加者は感銘を受けました。例えば、慰霊祭などでつながったカソリックとの縁は、地域に住むフィリピンの人たちへの支援や、近隣の小学校とフィリピンやフランスの小学校との交流へと結びついていっています。

死者たちが生きたかった世界をつくっていくことも鎮魂だ、そう気づいたのは、参加者も加わった読経の響きと護摩の炎の照り返しの中にいる時でした。生きる者にしか果たせないことを引き受け、実践されている鳥居師の在り方は、関わる人たちだけでなく世界をも変容させていくのだと思います。(三村紀美子)