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平和人権/中東

平和人権/中東2020/08/12

【街の灯トーク#5】経済危機のレバノンに生きる難民 そしてコロナ禍③


制約だらけの難民生活、そして経済危機

枝木 ついレバノンの難民の状況のお話に聞き入ってしまいましたが、コロナの話にいきつかないと困るので、少しスピードアップしていきましょうか。申し訳ありません。
 レバノンのパレスチナ難民は庇護する機関が違うだけではなく、他の国にいる難民ともかなり違う待遇を受けているということですが、そのあたりいかがでしょうか。

田浦 パレスチナ難民は西岸地区、ガザ地区、ヨルダン、シリアといろいろな場所にいますが、その中でも特にレバノンでは、UNRWAに頼って生活をせざるを得ない方が多いです。たとえば市民権を持つことができない、選挙権を持つことができない、公的なサービスを受けられない、キャンプの中では自由に働くことができてもキヤンプの外に出ると多くの職種につくことができない、就労権がないために弁護士、医者、タクシードライバーなどの仕事に就けません。パスポートも、ヨルダンや西岸・ガザであれば持つことができますが、レバノンでは難民渡航書というパスポートに類似したものを持つことになります。これは多くの国では認められていないので、自由に行き来することができません。
 そのために、シリアから避難してきたパレスチナ難民の中には、シリアでは医者や教師であってもレバノンでは認められず、本当にレバノンでの生活は苦しいという方がたくさんいらっしゃいます。

田浦 パレスチナ難民はUNRWAの支援を受けているのですが、その中には食糧支援として毎月現金が支給されます。その金額が日本円にしてひとりあたり3000円くらい。ただ、レバノンはほんと物価が高い国で、私も初めて行った時にびっくりしたんですけれど、鶏肉のサンドイッチが400円くらいするんですよね。 
 一月3000円というのは一日にすると100円。何が買えるんですか。ほんとに足りない。みなさんどうするかというと、借金をする、つけでお店から購入する、あるいは食事の回数を減らしています。家賃支援も、一月11000円くらいの補助がUNRWAからありますが、ベイルートなど首都圏では家賃がほんとに高いために、この金額では借りられません。そのために、二家族が一緒に借りて住む場合もありますし、それさえも難しくなって、もっと田舎に引っ越して、テントで生活をせざるを得ない人たちもたくさん聞きます。特に最近増えています。

枝木 ただでさえ大変な中で、昨年は経済危機まで起きたということですが・・。

田浦 2019年は10月以降に大規模な反政府デモが、レバノン人を中心に起きて、当時の首相が辞任し新しい内閣が成立しました。
 現地で使っていたのがアメリカドルとレバノン・ポンドなのですが、抗議活動がどんどん活発化していく中で11月頃からATMで米ドルの引き出しが徐々に難しくなり、現地のレバノン・ポンドしか引き出せない状態が続いています。

枝木 抗議活動というのは、経済危機が起きたことに対しての抗議活動ですか? 抗議活動がおきたから経済活動が悪化したのですか。

田浦 もともとデモがおきたのは、この生活状況ではやっていられないということからです。
 この4月からは、送金をしてもドルで受け取れなくなりました。長年、ある意味の固定相場でレバノン・ポンドと米ドルのレートが1ドル1550レバノン・ポンドだったのが、どんどん現地のレバノン・ポンドの価値が急落して、今だいたい1ドル8000レバノン・ポンドになっています。

枝木 な、何倍ですか?

田浦 5倍以上、6倍くらいですね。それでも銀行で引き出すのは、相変わらず1ドル1500ポンドで、街の両替所で8000レバノン・ポンドになるという感じです。
 現地の人が普段の生活でつかっていたのがレバノン・ポンド。それが現地通貨の価値がどんどん落ちていって、かつ物価がどんどん上昇している状況です。特に食料品の価格の高騰がみなさんにとって痛いところで、野菜果物が2倍、チーズや肉類がそれ以上。お肉はもともと「ごちそう」の人も多くいましたが、今はみなさんとても買えないとおっしゃっています。

枝木 家賃もあがったんじゃないですか。

田浦 家賃もレバノン・ポンドであがっていて、UNRWAからの支援もレバノン・ポンドで受け取っているらしいので、払うことが以前より厳しくなった、引っ越しせざるを得なくなった方もいらっしゃいました。

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