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国際協力の現場から

国際協力の現場から2012/02/01

APLA:東ティモールのコーヒー大不作


東ティモールのコーヒー大不作 〜「ピンチをチャンスに」変えて、コーヒーだけに頼らない地域づくりを〜

2011年、東ティモールでは、全国的にコーヒーの収穫量が大幅に減少しました。昨年との比較で2分の1〜3分の1ほどと言われています。裏作年ということもありましたが、前年の乾季に長雨が続くという異常気象により、花の大半が落ちてしまったことが原因です。一方で、高値が続いている国際相場の影響に加え、東ティモール国内の供給量大幅減によりコーヒー豆の市場価格が高騰したことで、収入としては例年の2分の1〜3分の2くらいにとどまりました。

とはいえ、収穫シーズン終了直後の9月には「数カ月でコーヒーによる収入が尽きてしまう」という生産者たちからの不安の声があがり、現地のオルター・トレード・ティモール社(ATT)には、来年のコーヒー代金の前払いを年内にしてほしいという要望が続々と届けられました。こうした状況を受けて11月に現地に入り、生産者に聞き取りをおこなった結果、12〜1月には現金が底を尽き、食べ物すらないような状況が出てきてしまう可能性があることが明らかになりました。そして様々な検討を重ねた結果、エルメラ県の12グループ(209世帯)に対して、主食である米の緊急支援をすることを決めました。

APLAとしては、前身団体である日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)長年の経験からも、生産者たちの自立のためにはこういった「モノの支援」が常に実施・継続されるのは好ましくないと考えます。また、そうした状況を生み出さないように、「コーヒーだけに頼らない地域づくり」や「有畜複合農業をもとにした安定した暮らし」をめざして、一年半ほど前からコーヒー産地の人びとと議論や試行錯誤を重ねてきていたわけですが、残念ながらそういった取組みはまだまだ始まったばかり。今回のような危機的な状況を乗り越えるほどには、まだ地域の力は育っていないというのが現状です。

そこで、米の緊急支援は基本的に今回限りのことで、将来的な自助・互助のために、単なるコーヒー生産者グループから協同組合に向けての発展をめざすという目標を共有したうえで、各グループに米の配布を実施することになりました。

2カ月分で一世帯あたり60キロというのは、大家族のコーヒー生産者にとって決して十分な量だとはいえませんが、ATTスタッフが雨季の悪路のなかを奔走し、各グループのコミュニティリーダーの働きもあって、無事に年末までに全世帯にお米を届けることができました。

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生産者グループのみんなも加わって30キロ入りの米袋を荷下ろし中。

APLAはこれまでATTのコーヒー生産者グループのうち2つのグループで実験的に収入の多様化や自給作物の栽培などをめざす取組みを進めてきましたが、別のグループからも「自分たちの地域でもがんばってみたいので、ぜひ協力してほしい」という声も寄せられています。人的・財政的に限りがあるため、すぐにそれらの声に対応することは難しいのが現状ですが、言葉通り「ピンチをチャンスに」変えて、今後同じような厳しい状況に直面したときに、ただ外部からの支援を待つのではなく、自分たちの力でそれを乗り越えていけるような地域にしていくための挑戦がそれぞれの場所ではじまる年になりそうです。ぜひ皆さんの知恵やお力をお貸しください!(APLA 野川未央)