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平和人権/アジア

平和人権/アジア2020/12/25

【街の灯トーク#9】コロナ禍のフィリピン、大都会の陰に暮らす子どもたちの未来①


コロナ禍のフィリピン、大都会の陰に暮らす子どもたちの未来

ゲスト:西坂幸さん(特定非営利活動法人アイキャン)/ 聞き手:寺西澄子(アーユス)
とき:2020年9月24日(木)


寺西 本日は、名古屋に本部を置くアイキャン(ICANで、フィリピン事業を担当されている西坂さんをお招きしてお話を伺います。本日はよろしくお願いいたします。西坂さんはいつからアイキャンに? もともとフィリピンにご縁があったのでしょうか。

西坂 2018年の9月からなので、ちょうど2年くらい経つところです。学生の時にスタディツアーでフィリピンに行くことがあり、それもきっかけでアイキャンに出会い、入職時からフィリピン事業と国内事業も担当しています。


設立当時から関わってきたフィリピン

寺西 メインのフィリピンのお話に入るまえに、アイキャンについて教えて下さい。

西坂 アイキャンは1994年に設立された団体です。1人の会社員がフィリピンを訪れた際に、過酷な状況におかれている子どもたちを目の当たりにして、何かできることがあるはずだと、友人と集めた5万円からスタートした団体です。アイキャンという言葉には、「ひとりひとりができることを持ち寄って社会を変えて行こう、活動していこう」という意味が込められています。
 もともとはフィリピンでずっと活動してきたのですが、徐々に活動地を広げていき、現在は、イエメン、ジブチ、ソマリアでも活動をしています。

寺西 フィリピンにもっとも古くから関わりがあるんですね。ICANは何の略ですか?

西坂 International Children’s Action Network の頭文字を取って、子どもたちへの活動をしていますが、同時にいまお話しした通り、自分に「できる」ことを持ち寄ろうという意味が込められています。

寺西 当初から、今日お話いただく路上生活の子どもたちの課題に取り組んでいらっしゃったのでしょうか。

西坂 活動はパヤタスというゴミ処分場で、ゴミを拾って生計を立てている住民や子どもたちに長靴を届ける活動から始まりました。ただ、与える活動だけでは根本的な解決にはつながらないというところから徐々に活動の幅を広げていきました。

寺西 今はどんな活動をされていますか。

西坂 今はフィリピンだけではなく、主に紛争地での活動、路上生活をしている子どもへの活動、災害被災地での活動、そしていわゆるスラムといわれる貧困地域での活動をしています。
紛争地では、爆撃などで壊された学校の再建や、難民キャンプの運営をしています。学校に行けない子どもがほとんどなので、路上での教育、施設での保護活動もおこなっています。
災害被災地での活動は、家の建設や食料など必要なものの緊急物資配布、貧困地域ではインフラが整っていなければインフラ整備、あとは技術訓練を実施してきました。

寺西 様々な地域で活動されていますね。

西坂 難民キャンプの運営はジブチ、家の建設や緊急物資の提供はフィリピンです。台風の影響を受けやすい地域でもあるので、自然災害、地震や台風災害の救援活動も過去におこなってきました。技術訓練もフィリピンのパヤタスです。ゴミ山に登って換金できるものを探して生活していた住民が、ゴミ山に頼らずに生活できるようにと始めたもので、今ではフェアトレード商品として日本でも販売しています。

フィリピンのコロナ事情

寺西 では、フィリピンのお話にうつりましょう。活動されている地域はどちらですか。

西坂 主にマニラ首都圏で、行っているのが路上の子どもの活動です。

寺西 活動について伺う前に、現在のコロナ関連の状況を教えて下さい。

西坂 このグラフをご覧ください。フィリピンの1日の感染者数の推移です。3月の初めから感染が拡大し、315日からマニラは封鎖されることになりました。世界的にも厳しい外出制限の措置がとられたのがフィリピンです。6月に一旦緩和されましたが、8月に感染拡大がぐっとあがったので、それを受けてまた強化され、緩和され、を繰り返していています。

寺西 一番厳しいときはどんな感じでしたか。

西坂 公共交通機関が一切使えなくなり、外出できる時間帯が限られて、生活必需品の購入以外は外出することができず、21歳以下や60歳以上は理由問わず外出が禁止されました。

寺西 21歳以下と60歳以上、年齢で分けるとは凄いですね。路上で生計を立てていた子どもたちは動けない状況ということで、違反するとどうなるのですか。

西坂 子どもたちもそれに怯えていて、外出してはいけないものの居場所もないので、役場の人がいない時間を狙って外に出たりしていたようでしたが、見つかると罰則を受けたり施設に連れて行かれるので、見つからないように走って逃げて隠れていたようです。

寺西 それが少し緩んだのが6月で、年齢制限もなくなったのですか。

西坂 移動規制は緩和しましたが、年齢制限は依然として続いています。

寺西 ドゥテルテ大統領のやり方は厳しい印象がありましたね。対策が立つまで学校は開けないとか。

西坂 フィリピンは通常6月から新学期なのですが、2回延期になって、105日から再開する予定になっています。再開しても対面ではなく、オンラインでの授業を実施することになっています。それもドゥテルテ大統領はワクチンができるまでは再開しないと言っていて。教育が遅れること自体への懸念もあるんですけれど、オンライン整備が整っていない状況もあるので、その点の懸念もあって遅れているようです。

寺西 そうした政権側からの厳しい制限があることに対する反発はないのでしょうか。

西坂 私が聞く限りは、どちらかというと支持している人の方が多いイメージがあります。国としても支持率はとても高くて、スタッフや事業地の人に聞くと、治安と経済がよくなっている面が支持を得ているようです。

(続く)

 


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